あらんです

ドーモ、あらんです。

Jump or Stay

あれから1ヶ月経ったのか..という感じであるが、まあそんなものであるか。 長いようで短かったし、短いようで長かった。 記憶における人間の時間感覚というのは、割と自由にできているなと思う。

あれからスイス、ポーランド、ベルギー、ノルウェーと回って、今アイスランドに来ている。 スイスとノルウェーはとても自分好みで、いつか本気で住んでみたいと思うようになった。 まだいいところしか見えていないという事はある。 特に、冬を経験していない。冬大丈夫だったら、もっと長期滞在できる算段を立てても良いと思った。

国を変えてみるというのは、環境を変えるカテゴリの中で、今の所最もハードルが高い(私の中で)。 そのうち宇宙に旅立てるようになったら、惑星とか銀河とか、そっちのハードルのほうが高くなりそうではあるが...これはまだSFのはなしである。

どこかへ飛び出すのは、高校をやめてからというもの、故郷を離れることも、転職をすることも、(もしかしたら失恋も)予行演習のように行ってきたことではある。 それが今度は国家になるわけだ。

観光客としてなら、日本人は大体どこの国でも受けが良かった...それは、ある程度金を落としてくれるからであり、彼らにとっては有益だからである。 大体において行儀がいいし、食文化や、最近だと漫画やアニメがとてもポピュラーである。 品行もおとなしいからノイズみたいに思われることもない。基本的には。

でも住むのは違う。言葉も習慣も違う人達の中に溶け込まないといけない。 住む人間として受け入れられるか...というのは全く別の問題である。 こちらとしても、旅行で感じるその国の気風や人間性というものだけで判断することはできないだろう。 その国の...というより、自分が暮らす周囲の人間性というのは、ある程度住んでみて、関わってみないと表層的なところしかわからない。 今は良い面しか見えていないが、いざ行ってみるとそうでもなかった...なんてことは、よくある話ではある。 そういう言葉というか、思ってるほどじゃないよ、という感情のベクトルは、なにか新しいことをする際にブレーキになる。

環境変える系のことをするときって、あまり詳細に考えないほうが、新しい物語が始まる気もする。 全く考えなしというのは愚行であると思うし、私は生活水準を落とす気は無いので、その意味での制約は大きい。 でもそれはハードルであって、ブレーキではない。 ブレーキは後ろ向きな志向になり、ハードルは前向きな志向になる...と思う。

私はできれば、その国の文化や習慣を尊重したいと思っているし、たとえばスイスやノルウェープロテスタントの国であるなら、プロテスタントに改修しても良い。 というか、特定の宗教には所属していないので、改修というより新規参入であるが... プロテスタントの教会は、カトリックの教会よりごちゃごちゃしてなくて、スイスの教会は神経質かってくらい静かで幾何学的な空間が作られている。 宗教の中身は別として、宗教が作り出した文化的な産物は波長が合っていると感じる。 余談だがスイス人の建造技術は半端ない。デザイナーが優秀というのはあるが、大工さん...というよりエンジニアの技術力がマジで半端ない。

なぜスイスやノルウェーが良いかというと、まず気候が良い、というのがある。 でもこれは前述の通り夏しか見ていないので、冬に来てみてもう一度判断するしか無い。 次に自然が豊かである。緑の色が明るいところが好きだ。 そういう景色は、空や雲と調和するし、開放的な感覚を得られる。リラックスできるというか。 そういう美しい色をした自然に囲まれているからなのか、街の景観も美しい。 清潔感もある。ゴミが散乱していない。 あと、水がおいしい。どちらも水資源が豊富である。

食もプロテスタントの国は不味いというイメージがあったが(ドイツ、イギリス、アメリカ...カトリックは、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル...ね? )覆された。 どちらの国もすこぶるコーヒーのクオリティというかフレーバーが自分好みすぎた。特にオスロチューリッヒは俺得すぎた。

歴史的に人間の知性が政治をちゃんと回してきているという風土のようなものがあり、治世が行き届いているというのも好感触だった。 犯罪に対しては、起きてから対処するのではなく、起きる前になんとかしようという発想で回しているらしい。 犯罪がないわけではない。どの国でも犯罪はある...

どちらの国も数カ国ご話せるのがデフォの国なのと、教育水準が高いので一般人の教養というか、話していて1聞いたら10返ってくるような人が多い。 これは普通にすげーって思った。

話し声がうるさくないということもある。スイスはドイツ語、フランス語、イタリア語が公用語だが、エリアによってメインの言葉が違うし、日本の方言みたいに独特な喋り方をする。 ドイツ人のドイツ語ほどハッキリしていないというか、まあこれは好みだと思うが、おとなしめである。 ノルウェーは、言語の構造によるのかもしれないし、民族性がシャイ(と言われている)なのも自分と波長が合っている、という気がした。 なお、彼らは騒ぐときはめちゃめちゃ騒ぐ。週末はパーリナイと化すようであった。

スイスもノルウェーも、EUには加盟してないし、どちらも移民政策が厳しい。 移民に関しては完全に拒否しているわけではなくて、移住するなら一定の条件を満たせというそれだけの話しである。 それは日本も同じである。 そのほうが治安は保たれるし、景観も保たれる... スイスやノルウェーに関しては植民地を拡大しまくったりとか、侵略の歴史が無いし、ノルウェーに至っては国民投票で独立が行われた、「はじまり」が平和な国である。 フランスやイギリスが移民を受け入れざるを得ないのは、過去の歴史上、奴隷貿易や植民地政策という、今の時代からしたら暴虐際周り無いことを行ってきたから、そのツケを払え 、ということでもあるのかもしれない。 この辺はわからない。ただ、歴史的に結び付きが強いアフリカ系の移民がフランスやベルギーに多いのは、そういう事情はかならずあるだろうと思った。

そんな歴史的な話は置いておくとして、現在の都市の状態は...というと...ブリュッセル、パリといった都市は、汚かった。 特にパリ、ブリュッセルはウンコが至るところに落ちているし、煙草の吸殻が尋常じゃないくらい落ちまくっているし、ゴミが散乱している。 夜な夜な誰かが喚き散らしている。 ホームレスは周辺地域から出稼ぎに来ているので、カフェで食事をしていると絡まれる。 まあ、そういうのも含めてごちゃごちゃしているのが好み、という人もいるだろうし、水清ければ魚棲まずという言葉もある。 逆に住んでみたら都なのかもしれない。 移民をたくさん受け入れることで、今までにはない新しい文化が生まれようとしているのかもしれない。 まあでも最終的にそこに是非の判断を加えるのは、今そこに住んでいる人である... 少なくともこれは俺の望む場所じゃねえな、と思った。

スイス、ノルウェーは共にEUに加盟していない。スイスに至っては国連にも2005年まで加盟していなかった。 そして、ここにアイスランドを加えると、EFTAが出来上がる。 何の奇遇かはわからないが、私が良いなと思った国は経済上の同盟国であった。 ちなみにかつてのEFTAは今話題のBrexitの中心人物、イギリスが盟主国であった。 ちなみにちなみにこれはゲームの話になるのだが、Anno1800というゲームで体験した話で、徒に同盟を組むと、同盟国の利害関係に巻き込まれて面倒なのである。 慎重に同盟国は絞って、できる限り中立で金のつながりだけ保っている方が、とても楽である...少なくとも自国の経済とか政治が回っている限りは。 外交上の「立ち回り」の旨さも、スマートだなあと思うのだ。 ただ、スイスに関しては、ドイツ系とフランス系で思想がかなり異なっている。 現地の人曰く、EU加入ははフランス系、反対はドイツ系、という感じらしい。 今後はどうなっていくかはわからない。まあでも、未来が不透明なのはどこも一緒か。

国が豊かであるということも重要だ。 そういう国はどこか余裕のある空気が流れている。 スイスもノルウェーも、共に健全な財政を誇っている。 特にノルウェーは資源国で、国の電力は豊富な水の力を使って水力発電で賄っている。 北海油田も所有しているため、ほとんど輸出に回していることから貿易黒字国となっている。 街を歩いていると、そういう国家財政の潤いのようなものが感じられた。

私は日本が結構好きだ。 京都や鎌倉、金沢といった歴史の風情がある街は魅力的である。 何より食事に恵まれている。これだけ食文化が豊かな国は無い。 一応日本語という言葉も、日常会話であれば日本各地で通じるし、少なくとも私の周りにはいい人が多い。 今の所仕事にも大変恵まれている。 公共交通機関は発達しているし、病院のサービスが安価で割といつでもアクセスできるというのはすげーと思う。 役所も、公務員がちゃんと仕事をしてくれる...基本的には。 地震や噴火といった災害は多いけど、その代わり温泉がある。耐震技術も大したものだ。 一般の住宅とか景観は決して洒落てはないが、中の機能性はかなり充実している。 特に水回りが。 これは海外から帰るといつも思うのだが、シャワーを浴びる時に本当に爽快である... 水道周りが頑丈。 ウォッシュレットもあるしな。(最近は海外でもよく見かけるようになったけど) 漫画やアニメが好きで、海外だとネットフリックスなんかはIPでコンテンツがフィルタされるので、見れない物が多い。 日本だと何でも見れる。 正直これほど魅力的な国は無いんではないかというくらい、自分にとってはたくさんの魅力がある。

まあ、嫌だから移住を検討するというよりは、強く心が惹かれているから行きたい、という話ではある。 また、自分の人生に新鮮さがかけており、私自身が退屈な人間になりつつあることが、どこかで嫌だと思っている、ということもある。

とてもポジティブである。 ...が、これではちょっと足りないという気もしている。 移住に関しては魅力的な部分だけ切り取ればよく、それであれば夏の間だけでいいじゃん、という気がしてしまうし、であれば旅行をたくさんできる仕組みをこちらで作ってしまえばいい...ともなる。 実際、そうなのかもしれない。わざわざ出ていく必要性があるかといえば、必要性はない。

どこかで、ここが「嫌だ」というモチベも持っていたほうが、爆発力というか、瞬発力にはなる気がしている...。 なにかに反発する力というのは、なにかに憧れる力と同じか、それ以上に強い。 使いようによって、とても重要な働きをするのである。 なので、そういう「反発心」とか「嫌悪感」みたいなものも、どこかで大事にしていったほうが良いのかもしれない。 でもそれは、ここで公開すべきことではない、とも考えている。 自分の祖国がディスられているのを見て、快く思う人も少なかろう。 秘められているからこそ、力になる類のものなのかもしれないし。 発散して終わりみたいになりそう。 それは「閉まっておくべき」ものなのだろう。 (「それ」は時に鞘に収まる刀のようなもので、鞘から出したら、どうなるか...というのはかつて経験したことがある。)

さて、問題は、自分が引っ越した先で何を提供するかなのだが... 当面はそのハードルをどうするかということを課題にしたい。 あるいは、不快な季節...たとえば冬行って駄目だったら、日本のどこかに根を下ろさざるを得ず、そこでどうやって自分の快適な空間を作っていくかということを考えなくてはならない。 がんばろ。

追記: 7/31に帰国します。あと残りコペンハーゲンとローマが消化試合的に残ってます。おみやげは...スーツケースの都合で、あまり入らないので、期待しないでください。土産話ならたくさんあります^^